運用されつづけるブランドをつくるために — MEDLEY AI CLOUD リブランディング「苦悩と葛藤の 8 ヶ月」の舞台裏 —

こんにちは。株式会社メドレー 医療プラットフォーム本部 デザイン室長の前田です。

こちらの記事は「MEDLEY Summer Tech Blog Relay」の 23 日目の記事です。

MEDLEY AI CLOUD リブランディングのメインビジュアル

はじめに

9 月 1 日、メドレーは新ブランド「MEDLEY AI CLOUD」をニュースリリースで発表しました。

これまで個別に展開してきた医療機関向けの業務支援システムを「MEDLEY AI CLOUD」として統合的にブランディングし、各プロダクトロゴも刷新しました。

この記事では 「なぜこのプロジェクトを立ち上げたのか」「どんな課題があったのか」「どんな未来を描いているのか」 についてお話しします。

なぜリブランディングをすることにしたのか

メドレーの医療プラットフォームは 10 年前、医療事典 MEDLEY からスタートしました。その後、CLINICS、Pharms(現在、MEDIXS に統合)、DENTIS などのプロダクトを開発・提供し、MALL、MINET、Lalune、@link、MEDIXS などメドレーにジョインするプロダクトも増えてきました。プロダクトによっては 20 年以上提供し続けてきた歴史があります。

私たちの強みは、病院・診療所・薬局向けの基幹システムから患者アプリまでを一気通貫で提供していること。
しかし、プロダクトが増えるにつれ 「統一感のなさ」や「ブランドのつながりが見えないこと」 が課題として浮かび上がってきました。

医療プラットフォームのプロダクト群 医療プラットフォームのプロダクト群

組織づくりから始まった

2024 年初め、メドレーの医療プラットフォームに在籍するデザイナーはわずか 5 名。プロダクト開発業務だけで手一杯で、ブランド構築を考える余裕は微塵もありませんでした。

デザイン人材不足の課題を解消するために、デザイン組織の立ち上げと採用の強化 から取り組みはじめました。

「デザイナー」という幅広い募集要項で採用をかけていたため、私たちが求めるスキルや役割が十分に伝わらず、なかなか採用決定に至らない状況が続いていました。

そこで、役割を「プロダクトデザイナー」と「コミュニケーションデザイナー」に分けて募集したところ、採用が一気に進展。結果として、2024 年末には 11 名体制となり、デザイナー同士で協力しあえる組織基盤を整えることができました。(2025 年 9 月時点では 14 名)

デザイン組織の変遷 デザイン組織の変遷

ブランド構築プロジェクト始動

組織体制が整ってきた 2025 年初め、いよいよブランド構築プロジェクトを開始します。最初のステップは医療プラットフォームの各プロダクトとして核となる「ブランド DNA」の設計から着手しました。

ブランドの軸を定めるため、指針を立てて、わかりやすく言語化することで、関係者の意識統一を図るのが目的です。

正直、私自身この規模のリブランディングを一気に対応していくことが初めての試みだったこともあり、どのように設計していくべきか悩みました。いろんなブランドの本を読み漁ったのですが、その中でも「ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと」が今回のプロジェクトを進めていくうえで参考になりました。

ブランド DNA を設計し、経営層やプロダクト責任者と議論を重ね、ブラッシュアップしていきました。

それと平行して、各プロダクトの LP に活用するデザインシステムの検討も進めました。見た目の統一感だけでなく「顧客に安心と信頼を届けるブランド体験」を実現するフロントエンド設計も同時に目指しました。

ブランド DNA 検討中の資料 ブランド DNA 検討中の資料

ロゴ刷新は予定外だった

当初、ロゴの刷新は計画していませんでした。
ちょうど同時期に CLINICS アプリのリブランディングが進んでおり、デザイナーのリソースを集中させる判断をしていたからです。

しかし、ブランド DNA を定義し、各プロダクトのサービスサイトをリニューアルしていく中で、それだけではブランドの一体感や方向性を十分に示せないのではないかという課題が浮かび上がってきました。

加えて、各プロダクトで AI 機能の搭載が検討され始めたことを背景に、今後の医療プラットフォームの魅力を「医療 SaaS + AI」という形で明確に示すため、統合ブランド「MEDLEY AI CLOUD」を立ち上げる決断を下します。

こうして最終的に、「統合されたブランド体験を象徴するためにはロゴ刷新が欠かせない」と判断しました。そこで全プロダクトのロゴ刷新を含む、大規模なリブランディングへと舵を切ったのです。

AI 活用の業務イメージをどう伝えるか

ロゴ刷新の方針が固まり、各プロダクトで共通して使えるデザインシステムの検討も整いました。あとは「実装あるのみ!」と意気込んでいた、その矢先です。

新たな課題が立ちはだかりました。
ーー「医療 SaaS + AI」という魅力を、どう伝えるのか?

当時、AI 機能を搭載したプロダクトはまだ開発途中。
実際の医療現場でどう役立つのか、どのようにして効率化につながるのか。
その具体的なイメージを示す手段が不足しているのでは…。
そんな不安が広がっていったのです。

自ら AI 活用で業務効率化を体感してみる

そんな不安を打ち消すきっかけになったのが、「AI 活用のイメージを動画で見せてしまおう」というアイデアでした。

ちょうどその頃、社内では生成 AI 利用のガイドラインが整備され、各部門でもそれに沿った AI 活用が推進されていました。その流れも相まって、私自身も AI を取り入れた動画制作に挑戦することにしたのです。

ナレーションや BGM に AI を駆使し、構成や演出については自ら試行錯誤を重ねました。その結果、短期間でムービーを完成させることができました。

「AI による効率化を語るなら、まず自分が体験してみよう」

その思いから取り組んだ動画は、ブランドやプロダクトの未来像を端的に伝える欠かせない要素となりました。

運用されつづけるデザインシステムをどう構築するか

Developer ブログらしく、同時並行して進めてるデザインシステム構築についても少し触れておきます。デザインシステムは「作ったら終わり」ではなく、継続的に運用される仕組みがなければ意味がありません。

マルチ CMS 環境という課題

各プロダクトの LP は、WordPress や外部の CMS、Headless CMS など、バラバラな環境で運用されています。そこで、同じ環境でデザインシステムを構築し、どのサイトからでも共通で利用できる状態を目指すことにしました。

この課題を解消するために社内のエンジニアともすり合わせをして、以下を実施することにしました。

・CMS の一本化:Headless CMS へ統一
・モノレポ化:共通デザインシステムを集中管理
・コンポーネント呼び出し:各プロダクトから共通の UI コンポーネントを利用可能に

この仕組みにより、UI やブランドトーンを一貫させつつ、各 LP への高速な展開ができると思っています。

現段階では、 MEDLEY AI CLOUD のみで実装されていますが、今後は各プロダクト LP へも順次展開していく予定です。この取り組みの詳細は、また別の機会に説明できればと思っております。

これから

ロゴは無事に完成し、各プロダクト LP への反映も進んでいます(ロゴ制作についても別の機会に説明できればと思います)。
けれども、ブランド構築プロジェクトはまだ始まったばかり。ロゴ刷新はあくまで出発点であり、これからはブランド体験の一貫性をさらに高め、医療現場や患者とのさまざまな接点にブランドを浸透させていくフェーズが本格化します。

私たちが提供する MEDLEY AI CLOUD の各プロダクトの使命は、「医療現場の業務効率化と、より良い患者体験を支援する」ことにあります。プロジェクトを進める中で、私自身も AI ツールの活用が推進力になることを強く実感しました。

全プロダクトで共通する 5 つのブランド・プロミス

  1. より良い患者体験
  2. AI 活用
  3. 安心・安全
  4. オープン連携
  5. リーズナブル

これらを軸に、病院・診療所・薬局・歯科といった領域をつなぎ、患者・生活者と直結する「ひとつながりの医療プラットフォーム」を実現していきます。中長期的には、社会インフラの一翼を担うプラットフォームとなることを目指しています。
全プロダクトで共通する 5 つのブランド・プロミス

さいごに

MEDLEY AI CLOUD ブランドの浸透や各プロダクトの開発を進めるうえで、これからもデザイナーの力は欠かせません。

このブランド構築プロジェクトは、私たち自身の想いや未来への取り組みを社内外に届けるため、外部に頼らず、社内メンバーだけでつくり上げてきました。

今後はブランド認知のさらなる拡大と事業成長を見据え、デザイナーをはじめ、多様な専門性を持つ仲間を必要としています。

少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ MEDLEY AI CLOUD サイト内の採用一覧をご覧ください。

私たちと共に、未来の医療体験を一緒につくっていきましょう。