はじめに
こんにちは。医療プラットフォーム本部 プラットフォーム開発室の島谷です。メドレーでは 2019 年から新卒エンジニアの採用を続けており、毎年新卒向けエンジニア研修を実施しています。 本記事では、2025 年に実施した新卒研修の設計思想とプログラムの全体像をご紹介します。メドレーで働くことに関心のある学生の方はもちろん、私たちの開発文化に興味のあるエンジニアの方にも、メドレーという会社の雰囲気が伝わる内容になれば幸いです。
新卒研修の目的
私たちが大切にしているのは、単なるスキルの習得にとどまらず、「課題にどう向き合うか」「どのように学び、成長していくか」といった姿勢やマインドセットを身につけてもらうことです。
新卒研修のミッションは、エンジニアとして必要な基礎技術と、問題解決に欠かせない考え方を習得し、配属後に高い成果を発揮するための土台を築くことにあります。研修では「技術的な基礎力」と「問題解決力」を重点的に養い、配属後すぐに開発を進められる状態を目指します。
もっとも、研修期間だけで一人前のエンジニアになることは難しく、だからこそ長いキャリアを通じて自ら成長し続ける姿勢が欠かせません。そうした背景があるからこそ、私たちはスキル以上に「成長し続けるための姿勢やマインドセット」を大切にしています。
研修の全体像
今年の新卒研修は、大きく 4 つのステップで構成されています。 まず社会人として必要なビジネススキルとマインドを身に付け、技術的な基礎を作り、そのうえで実務としての開発を体験し、最後に成果発表会で振り返りを行い今後の成長へつなげる。学びを段階的に深めていく一連の流れを設計しています。
期間と研修全体の流れ
HC 研修、外部研修
人事部が実施する内製の HC(Human Capital) 研修と、外部研修を実施しました。HC 研修では、社会人に必要な基本動作(報連相や PDCA)やマインド(ニーズを理解しニーズに応える)の基本を習得してもらい、外部研修では、より体験的な演習を通じて社会人としての自覚を持つきっかけとしました。
基礎研修
エンジニアに求められる 横断的な基礎知識の習得、深く学び続ける姿勢の醸成、チームで成果を出すためのコミュニケーション能力の向上 を目的としています。 フロントエンド(TypeScript/React)、バックエンド(Ruby on Rails)、インフラやミドルウェア(データベース、AWS)など幅広い領域を実践形式で扱いました。
加えて、CTO・VPoE による事業説明や、メドレーでエンジニアとして働くうえでの心構えを学ぶセッションも実施。QA チームやデザインチームからは、それぞれの取り組みを共有してもらい、組織全体での開発の在り方についても学んでもらいました。今年は新たな取り組みとして、AI 活用に関する講義も行っています。
VPoE 山﨑さんによる講義の様子
事業部 OJT、開発 OJT
事業部 OJT では、複数の事業部でビジネスの理解を深め、現場業務を体験します。現場社員とのコミュニケーションを通じて、エンジニアへの期待やその期待の裏側にある状況の一端を理解し、顧客志向を育みます。
開発 OJT では基礎研修で身につけた知識やスキルを実際の開発現場で活かすフェーズです。既存プロダクトの開発チームに加わり、実務としての開発を体験します。
成果発表会
研修の集大成として、これまでの学びや開発 OJT での取り組みを整理し発表してもらいました。
メンター制度
研修を支える仕組みとして、今年も一人ひとりにメンターをつける「メンター制度」を実施しました。研修本体での学びを補い、成長をより加速させることを目的としています。
研修期間中は毎日、日報を書いてもらっています。その日取り組んだことや学んだことを弊社の行動原則(Our Essentials)に基づき整理し、読み手を意識した文章にまとめることがルールです。日報はメンターが必ず目を通し、毎日フィードバックを行いました。やりとりの内容は、技術的な疑問点への対応だけでなく、課題への向き合い方や物事の捉え方といった長期的な成長につながる視点を与えることを意識してもらっています。短期的な知識の提供ではなく、将来にわたって役立つ考え方を養うことを重視しました。
さらに、週次では 1on1 を実施し、振り返りの場を設けました。目標や課題を言語化し、メドレーの行動規範の観点から自らの振る舞いを点検。翌週に試す具体的な一手へと落とし込むことで、実践的な成長サイクルを回しました。もちろん、真面目な内容だけでなく、砕けた相談も自由にできる場とし、安心して取り組める環境づくりも大切にしています。
日報に対するフィードバックの様子
研修の詳細
HC 研修、外部研修
HC 研修では、社会人に求められるビジネスマナーやキャリアマインド、ロジカルシンキング、コミュニケーション能力などのポータブルスキルを学びました。座学だけでなく、ワークショップを行うことでメドレーグループの他職種の新卒とも交流も行いました。最終日はチーム対抗の寸劇を行うことで、一人ひとりの発言力を高め、一体感を生み出すことができました。
外部研修では、講師が顧客役を演じたり、チームを企業に見立てた競争環境で取り組んだりと、実際の現場に近いハイプレッシャーな状況を体験しました。その中で、適切なコミュニケーションやチームワークの大切さを実感し、成果につなげるプロセスを学ぶことを目指しました。
基礎研修
基礎研修は、実際にプロダクト開発に携わっているメドレーのエンジニアが、教材づくりから講師までを担当します。単なる知識の習得にとどまらず、判断の背景や根拠を言語化し、他者に伝わる形で残すことまで含めて学ぶことを大切にしています。
全体を通して繰り返し伝えられていたことは、「課題を終わらせること自体を目的にしない」ということです。わからない点をそのままにせず、ドキュメント・実装・計測結果を往復しながら自分の言葉で理解し直す。この姿勢を身につけることが、研修を通じて最も大事にしている部分です。
ここでは主要な研修内容を紹介します。
TypeScript/ React
この研修では、フロントエンド開発の基礎として TypeScript と React を扱いました。TypeScript の型システムなどの言語仕様を理解したうえで、React のコンポーネント設計、状態管理、フック などの基礎を学びます。
演習課題は Pull Request 形式で提出し、背景や選択肢、判断理由を文章にまとめたうえでコードレビューを受ける流れとしました。これにより、単に技術を学ぶだけでなく、技術を深く掘り下げる姿勢や、GitHub を使った開発フロー、レビューを通じたテキストコミュニケーションを実践的に身につけることを狙いとしています。
データベース(DB)
次に、データベースの基礎を幅広く学びました。テーブル設計や ER 図、リレーションの理解に加え、実際にクエリを書く演習として「クエリ 100 本ノック」に挑戦。WHERE や JOIN といった開発や分析で頻出する構文を身につけました。さらに、クエリ実行計画の読み方やインデックス設計など、パフォーマンスチューニングにも取り組みました。長期的な保守性や変更容易性、パフォーマンスを意識しながらデータベースを扱うための基礎を、実践的に学ぶ内容です。
アプリケーション開発実践
フロントエンドとバックエンドをつなげた実践的な開発演習として、Rails on Rails で API を実装し、React で SPA(Single Page Application)を構築する研修を行いました。フードデリバリーサービス(Uber Eats のようなアプリ)を題材に、決められた要件定義から設計、開発、テストまでを一気通貫で経験します。
ここでは、TypeScript/React 研修で身につけた基礎を応用しながら、実際にプロダクトとして動くアプリケーションを作り上げることに挑戦しました。仕様の整理からテスト設計までを通じて、フロントエンドとバックエンドを横断的に理解し、開発に必要な実践力を養うことが目的です。
Docker / AWS
最後に、インフラ領域の基礎として Docker と AWS を扱いました。メドレーでは AWS を中心に利用しているため、実際にアプリケーションを AWS 上にデプロイし、動作させるところまでを体験します。可用性やスケーラビリティを考慮したシステム構築に加え、ログ、監視、アラート設定といった運用面も含めて一通り設定。さらに簡易的に負荷をかけ、スケールアウトやアラートが正しく機能するかを検証しました。単に作るだけでなく、安定的に運用できる状態にすることの重要性を学ぶハンズオンとなっています。
事業部 OJT、開発 OJT
基礎研修を終えたあとは、現場社員から研修を受ける事業部 OJT に取り組みました。事業部によって取り組む内容は異なりますが、市場環境やミッション、今後の方向性を理解することから始まり、Sales や Customer support の業務の一部を体感します。
その後は、既存プロダクトの開発現場に加わり、実際の開発を体験する OJT に取り組みました。ここでは、抽象度の高い課題に対して自ら問題を整理し、解決に向けた手順を考え、周囲と協調しながら前に進める力が求められます。
開発の過程では、リリースに至るまでの一連のプロセスを経験します。わからないことを適切に言語化して周囲に伝え、協力を得ながら課題を乗り越えることも重要なポイントです。
今年の OJT で取り組まれていたタスクをいくつかピックアップしてみます。
- デザインシステムの MCP サーバー構築
- 顧客向け管理画面の UI/UX 改善
- 電子カルテにおける書類作成機能の改善
- 患者向け通知機能の UX 改善
タスクを進める中では、先輩エンジニアから様々な観点でフィードバックを受けます。これまで自分になかった視点や考え方に触れることで、新卒メンバーは大きな学びを得ていた様子でした。
成果発表会
研修の締めくくりとして行ったのが成果発表会です。ここでは、研修や OJT を通じて学んだこと、自身の成長・変化を自分の言葉で整理し、周囲に伝える力を養うことを目的としています。単に振り返るだけでなく、学びを言語化して共有することで、個人の経験をチーム全体の資産へと昇華させる場でもあります。
当日は、CTO や VPoE、メンター、配属先のマネージャーなど、研修に関わった多くのメンバーが参加しました。 新卒の皆さんは緊張した面持ちでしたが、先輩たちから温かいフィードバックや応援の言葉が寄せられ、会場は和やかな雰囲気に包まれていました。
各 VP の皆様を始め、関わった方々からコメントいただきました
まとめ
研修という限られた期間の中で、一人前のエンジニアとしての力をすべて身につけることは容易ではありません。だからこそ、この期間を通じて「これから成長していくための土台」を築いてもらうことを大切にしてきました。本番はここから始まります。
新卒の皆さんには、これからは仲間として実際の開発現場で活躍しながら、さらに経験を積み重ねていくことを期待しています。私たちのミッションである 「医療ヘルスケアの未来をつくる」 を実現するために、それぞれが力を発揮し、共に歩んでいけることを心から楽しみにしています。
We’re hiring!
サマーインターン参加者募集中!
メドレーでは、この夏に開催するエンジニア向けサマーインターンの参加者を募集しています。 実際のプロダクト開発を体験しながら、エンジニアとしての成長につながる機会を提供します。
「まずは話だけ聞いてみたい」「雰囲気を知りたい」という方に向けて、カジュアル面談も実施しています。少しでも興味をお持ちの方は、お気軽にご応募ください。
募集はこちら
中途採用も積極募集中!
また、エンジニアをはじめとした中途採用も積極的に行っています。 ヘルスケアの未来を一緒につくる仲間を幅広く募集していますので、ぜひこちらもご覧ください。
中途採用の募集一覧はこちら